今お客様のご依頼を受けて会社の移転先を探しています。
大阪市内の中心部で事務所を探しているのですが、テナントの賃料って驚くほど下がっています。
エレベーターの付いている比較的新しい事務所でも坪単価6000円〜7000円ほどで見つかります。
しかも空調や内装工事まで全て出来上がっていたりします。
礼金や敷金も昔に比べ格安になっていて、敷金礼金合わせて2ヶ月からなら3ヶ月分で借りることが出来たりします。
そういった事務所は昔は保証金10ヶ月分、家賃も坪単価1万円は超えていましたから半値近い賃料まで下がっていることになります。
しかも、そこそこ駅から近い好立地のビルでそうですから、駅から少し距離のあるテナントビルなんかではもっと安くなっているのですよね。
今はシェアオフィスとかも流行っていますから、自社で大きなテナントを借りる必要がなくなっているのかもしれません。
その事務所を探している中で、事務所内での移転が結構行われていることが分かります。
新規募集の条件を見て、入居中のテナントさんがそこに移りたいと打診してくるケースです。
そのまま賃料を下げてもらうという選択肢もあるはずなのですが、そこは認められないということで改めて保証金を積み直し移転しているということでしょうか。
このようなケースで、オーナーさまはどういう対応するのが正解なのでしょう?
家賃を下げて対応する場合、他のテナントさんが同じ交渉をしてくる可能性があります。
全てのテナントの賃料を下げるという選択肢は持ちにくいですよね。
では、先ほどのケースのように別のフロアで再契約する場合、引越しするテナントには新たな保証金を提供する必要と、引越し費用が生じます。
会社によっては、その費用をかけるのを嫌がる場合がありますので、他のテナントへの抑止力にはなります。
オーナーにとってベストな結果は、新しい店子が借りてくれ、既存のテナントがそのまま入居してくれるというケースです。
今の時代、集客はネットでも行いますのでこのようなケースも増えています。
賃貸マンションの一室でも同じようなケースがあります。
しかもよくあります。
ネット上の広告を見たり、大規模な改装工事をしていると入居者から問い合わせが入ります。
今の家賃と変わらないならそちらに移りたいんだけど?
この時どう対応したらよいのでしょう?
同じマンションへの移動は認めておりません。
こんな対応しては出来ないですよね。
先ほどのケースと同じで、新しく申込みしてもらえるなら大丈夫ですよと答えるのでしょうね。
でも、入居者からすると普通に契約するなら別の新しいマンションに移ろうかなとも思ってしまいます。
もう一度保証金等を積み直して別の部屋に移動することのメリットがそんなにないかもしれません。
一度引越ししたいと考えたお客様は、別の選択肢も視野に入れるために物件探しを始めてしまいます。
そうなれば空室が一室だったものが二室に増えてしまうかもしれません。
その場で引越しを断念してくれたとしても、空室予備軍にはなってしまいます。
もちろん家賃滞納やクレーマーなど、退去してもらいたいと思っているお客様なら別ですが、長年入居してもらっているお客様や、きっちりとお家賃をお支払いいただいているお客様なら、退去になることは避けたいところです。
そうなると、気持ちよく新しい別の部屋に移動してもらうことが最善の選択肢になってきます。
例えば礼金2ヶ月、家賃60,000円で募集しているお部屋なら、礼金1ヶ月分をサービスするとか、二重家賃にならないような配慮をしてあげるとかですよね。
新たに不動産屋さんに頼んで部屋付けをしてもらうより安上がりです。
しかもお客様は喜びます。
オーナー自らが賃貸経営をしていればこのような選択肢も持つことが出来ます。
管理会社に全て任せている場合なら、このようなケースでも手数料をきっちり取られる場合もありますから、みすみす空室を増やしてしまう選択肢を選んでしまうことにもなり兼ねません。
もちろん大規模なマンションの場合は個人で管理することは難しいこともありますので、管理委託契約書を締結する際に条項の一つにいろいろな文面を入れ込んでもらうことも必要だと思います。
『自らが入居希望者を発見して賃貸借契約を締結する場合、募集に関わる費用は請求しないものとする』とか、
その場合契約業務に携わってもらっておかないと家賃滞納やクレーム処理で動いてもらわないといけないので、
『契約書類作成費用として金○○円を支払うものとする』
というような文面を追記するとかですよね。
あと、管理会社でもピンからキリまでありますので、管理料は安いけど内装工事費用が高いとか、貯水槽の清掃や消防点検などで高額な請求が来るという相談もあったりしますので、
『工事業者は甲(家主)の指定するもの又は甲が認める業者を使用するものとする』というような文面も入れておきたいものです。
今の時代、賃貸経営は左団扇ではありません。
賃貸業者へ支払う報酬も以前に比べ高額になってきていますし、賃料も下がっています。
その中で利益をきちんと出していこうとすると、それなりの経営努力も必要だになってきます。
賃貸マンションオーナーさんも経営者の資質が求められる時代になっています。
全てが自ら行なうことが出来ればベストですが、みんながみんなそうなれるわけではありません。
もちろんしっかりとした管理会社で良心的な管理会社と出会うことが出来れば今回のような心配は杞憂に終わるでしょう。
でもそうした会社を見つけることって容易くはないのですよね。
ずさんな管理会社によって、質の悪い入居者を放り込まれたり、先ほどのような高額な修繕費を請求されて、マンション経営に嫌気がさし不動産を手放すという例も少なくはありません。
悪い不動産会社ばかりではありませんが、良心的な不動産会社ばかりでもありません。
見極めは難しいですよね。
長年営業してしているから大丈夫というわけでもありませんし、新しい会社だからダメだというわけでもありません。
一番分かりやすいのは、その会社が管理している物件を見に行くことですね。
綺麗に保たれているならきちんとした会社ということが分かります。
良心的かどうかは、こちらがリクエストすることに対してどういう回答をしてくるかで判断するしかありません。
先ほどの契約内容を容認してくれるとか、先に経費削減の提案をしてくれたりするとかで判断していけばいいのではないでしょうか。
良心的な会社では、金融機関の借換の相談にも乗ってもらえたりします。
金利が1%下がるだけでも大きな経費削減になります。
不動産経営を健全にするためにはお付き合いする不動産会社選びも大切です。
一番いいのは自らが勉強して知識を身につけることです。
不動産会社に頼らない賃貸経営、これが理想です。
不動産会社の私がこうした話をするのもおかしな話ですが(笑)

みなさんこれからも勉強して、安定した不動産経営を目指しましょうね。