最近はサブリース契約も10年間から30年間、35年間など長期の契約商品が出てきています。

これは所有者にとってありがたい話なのですが、そもそも何でこんな長期間の保証ができるのかというお話です。

大東建託などは『35年間一括借上』をうたっています。

『35年間家賃を保証してくれるなら何のリスクもないから建てちゃおう』

まさかこんな安易な考えで新築のアパートを建築する人もいないとは思いますが、きちんとした説明がされていなければ分からないですよね。

ハウスメーカーさんがターゲットにしているのは不動産投資家の方々ではなく、地主さんなどの不動産経営の素人さんです。

30年保証、35年保証といっても家賃の見直しはその期間中も行われます。

たいがいは2年毎、5年毎とかで賃料の見直しが入ります。

その際にいきなり大きな減額をされてキャッシュフローが一気に悪化する。

→ローンが支払えなくなる

→滞納し、競売にかけられるもしくは売却を迫られる

→土地がなくなってしまう。

こんなケースも想像出来てしまうわけです。

木造住宅の法定耐用年数は22年です。

もちろん22年で建物が朽ち果てるわけではありませんので、これはこれでどうなのかという話ですが、いつから木造の収益不動産で30年ローン、35年ローンが組めるようになったのでしょう?

最近の話です。

30年借上げ、35年借上げという契約を担保にして金融機関が30年返済、35年返済を組むようになりました。

そうなのです。

ハウスメーカーの30年借上げ、35年借上げというのは超長期の融資を引き出すためのテクニックの一つなわけです。

なぜ超長期の融資が必要なのか?

またなぜ低金利の融資をセットにして販売するのか?

それは建築費が高いからです。

利回りが低いからです。

もちろん戸数にもよりますが、あるハウスメーカーさんなどでアパートの見積もりを取ると木造で1室あたり1,000万円から1,200万円ほどかかります。

そこから回収できる家賃は6万円から7万円だったりします。

土地から購入して建築すればとてもじゃないけど合う利回りではないわけです。

それならなぜ建てるの??

『相続税対策』

という大義名分のもとにどんどん新築アパートが建築されているわけです。

借金を作って相続税の対象となる資産を減らしましょうということです。

1億円の現金を持っていても1億円の借金があれば資産は0です。

評価額5,000万円の土地の上に建築費1億円のアパートを全額借金で建てれば、マイナス5,000万円になります。

そういう見方をすればいいように感じますよね。

たしかに不動産を購入することって相続税対策には有効です。

でも、損をしなくても十分相続税対策はできるのです。

建物をわざわざ2割も3割も高い建築費で建てなくても、相場通りの建築費で建物を建築しても節税にはなります。

要はスキームの問題です。

35年返済で金利0.6%、建築費1.2億円の借入で毎月の返済額は316,800円。

借上げ後の利回りが例え5%でも毎月50万円の家賃収入があります。

返済できてしまうわけです。

固定資産税を支払ってもまだお釣りがでます。

相続税対策のみが目的であれば、節税はすでにできているわけなのでこれで十分なのかもしれません。

でも、借上げ賃料の見直しが入った場合はどうなるのでしょう?

5年後に借上げ賃料が10%下落、家賃収入は45万円になります。

もうアップアップです。

さらに5年後にさらに10%下落すれば、家賃収入は40.5万円に。

固定資産税を支払えばキャッシュフローはもうマイナスです。

0.6%という金利で考えてもこうなるのです。

そうならないためにはまず相場を把握しておくこと。

建築費がどのくらいかかるのかというものも把握しておく必要があります。

安い建築費で建築し、安い金利で借り入れを起こせば失敗は限りなく回避できます。


そもそもサブリースの仕組みってどうなっているのかご存知ですか?

オーナーさまから部屋を借上げ転貸する。

オーナーさんに支払っている賃料より高い賃料で入居者に貸し出すから利益が出るのです。

一般的には査定賃料の80%から90%で借上げする会社が多いですよね。

その差額でリフォーム費用とか、仲介業者に支払う手数料をまかなっています。

募集賃料が下がれば当然収支は圧迫しますから、元のオーナー様との借上げ賃料を下げる交渉をしてきます。

『家賃保証があるから安心』

ではないのです。

サブリースは低金利で長期の融資を引き出すための材料と思っていればいいのです。

サブリースがもし切れればどうなるの??

空っぽにされて返されても困る・・・

というオーナー様もいらっしゃるかもしれません。

ただほとんどのサブリースの契約には入居者保護の契約内容が織り込まれています。

どういうものかというと、

『サブリース原契約が解消された際には、貸主は転貸借人の契約内容を引き継ぐものとする。』

文面は多少違うかもしれませんが、同意義の文面が必ず入っているはずです。

つまり、借上げ賃料の値下げ交渉の際にこの文面を念頭においておけば焦らなくてもよくなるかもしれませんよ。

もちろん建物の入居状況にもよりますが、満室に近い状況であればサブリース契約を解消した後の方が家賃収入がよくなるケースの方が多いかもしれません。

当初の設定賃料が高めに設定されていたなら別ですが、相場より安い賃料で借り上げているならいざとなった時に自分で賃貸経営をすれば破たんは回避できます。

でも内装工事費用とか空室のリスクとか考えれば、キャッシュフローさえしっかり残っているのならサブリース契約は魅力です。

まぁバランスの問題ですよね。

サラリーマンで賃貸経営の時間もない、手間をかけることが出来ないという方ならサブリースでなくても毎月の管理費で家賃の5%ほどの管理手数料を取られてしまいます。

しかも、入退去の際にリフォーム費用、仲介業者の手数料も発生します。

それならばサブリースの方が煩わしくない、手間もかからないということになります。

サブリース契約をするにしても、自分で賃貸経営を全てするにしても賃料が適正なものなのかということはしっかりと調査しましょうね。

そこが間違えてしまうと、何年後かには・・・

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最近、需要のない地域にもどんどん新築アパートが建てられています。

表面利回りをよく見せるために20平米前後の1Kとか1Roomもよく建てられています。

そうした物件は今後必ず過当競争に巻き込まれてしまいます。

需要のない地域の物件などは、いくら賃料を下げても入居希望者さえ現れないということも考えられます。

しっかりと見極めてくださいね。

表面利回りだけいいからと言って買ってはいけませんよ。

賃貸需要のない地域でもサブリースがついているからと言って安易に建築したらダメですよ。

適正賃料、適正価格をきちんと見極めることさえできれば不動産投資に失敗はありません。

自分で鑑定できない壺とかを何百万も出して購入しないでしょ?

なのに、なぜ不動産だけ自分で鑑定できないのに購入しちゃうのでしょう?

大手のハウスメーカーが建てているから?

大手の銀行が融資してくれるから?

それだといいカモになってしまいます。

私が中古物件を購入する際に判断基準にしていることは、まず新築で建築すればいくらの建物なのか?

築年数経過していくらで販売しているのか?

それが割安感があれば購入しますし、割安感がなければいくら高利回りでも購入しません。

新築物件でも同様です。

スケールメリットを発揮して数多く建築している会社が販売している物件なら、自分で一から建築するより安い物件があったりします。

自分で一から建てた物件なら募集にかかわる費用も自分負担です。

それが満室で引き渡ししてくれるなら、そっちの方がメリットがあったりすることもあります。

土地値はいくらなんだろ?

建築費はどのくらいかかっているんだろ?

自分で建てるより安いな。

なら買っちゃおう。

こんな思考回路です。

いくら手残りするかではなく、将来手放すときにいくらで売却できそうなのか?

ここも重要ではないでしょうか。

あっ。

これはあくまで個人的主観なので、いろいろなご意見はあるかもしれません。

本来の不動産投資は売却するものではなく、所有し続けるものだという考えの方もいらっしゃるでしょうし、売却して利益を出してこその不動産投資だという方もいるでしょう。

私はどちらも正しいと思っています。

結局損を出さなくて儲けることができればどちらも正解なので。

インカムでもキャピタルでも儲かる。

これが理想です。

不動産って株式と違い変動は少ない商品です。

長期にわたり変動します。

その中には低迷する時期もありますし、高騰する時期もあります。

低迷している時期に手放さなくてはいけない状況だけ避けることが出来れば損することなど滅多にないはずなのです。

あなたが所有しているものは商品であって商品ではないのです。

欲しいと思う方が現れた時だけ売却する。

こんなスタイルでいいのではないでしょうか?

35年借上げ。

ここから話がどんどん発展していきましたが、利用されるのではなくその制度まで利用しましょう。

うまく利用すれば意外と利用価値がある商品もあったりしますので。

ただ契約内容の確認だけは怠らずしてくださいね。

疑問点はきっちり確認する。

あいまいな表現のところは特に注意を払う。

これだけはしっかりと押さえておいてください。

以上、サブリースの注意点でした。