かぼちゃの馬車、シェアハウスのサブリース破綻問題でスルガ銀行の融資体制、不動産業者の改ざん問題が騒がれています。

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不動産投資の新規相談に来られるお客様が月に数組ありますが、その半分くらいは
『自己資金なしで購入したいんです。』
という相談です。

『自己資金なしでマンションオーナー』
という広告は不動産投資のポータルサイトでよく見かけたフレーズです。



強烈なキャッチフレーズですよね。
高嶺の花だと思われていたマンションオーナーに、まさか自己資金なしでなれるなんて。

話を聞いてみたい。
ぜひともマンションオーナーになってみたい。
こう思うのも当然だったかもしれません。

また、マンションオーナー仲間からは
『おれは自己資金なしで物件購入したよ。』
『あー。そんなのみんなやってるから大丈夫。』
こんな話もよく聞いたのでしょう。

毎月うちのような会社の規模でも、このような相談者が数組来られます。

矢面に立たされているスルガ銀行だけでなく、どの金融機関も基本
『自己資金は2割。』
『最低1割は自己資金を入れてください。』
こういう話は最初にされます。

1億円の物件なら2割は2,000万円、諸費用入れれば2,500万円は自己資金が必要になります。

それなのに
『去年1年間で3棟買ったよ。』
『借入金5億くらいになったかな。』

いったいいくらお金持っていたんですか?
1億円?
2億円?

元ヒルズ族じゃあるまいし。 

こんな話がついこないだまでまかり通っていました。

シェアハウスだけでなく『三為業者』と呼ばれる不動産業者さんも世の中を席巻していました。

『三為業者??何それ?』

一般の人はほとんど聞くことのない言葉ですよね?

物件を購入し、また転売すること、これは不動産業者の日常の業務です。

中古物件を購入し、建物を解体し新築を建てる。
中古物件を購入し、リフォームして売却する。

この流れをする中で不動産業者は買取資金を捻出し、所有権移転登記も済ますのですが、この所有権移転登記を省略し即転売する。

手付金だけ打って、決済金は直接のエンドユーザーの決済金で賄う。

つまり中間省略をするということです。

売主→不動産業者→買主

この間の不動産業者の登記を省略するということで中間省略と呼ばれていました。

ただこのやり方は問題があるということで認められなくなっていたのですが、ここ数年この中間省略が名前を変え復活しました。

『第三者のためにする売買契約』
略して三為契約です。

不動産業者が第三者のために取得し、売却することを前提とした売買契約に関しては登記の必要がないというものです。

もともと宅建業法でも、不動産業者は売買契約を締結した時点で、その物件の所有権がない状態でも売主になれることになっています。

なので法律上は何の問題もなく、登記を行わないことにより中間搾取する利益分が圧縮できるため、買主にも有利に働くべきものでした。

間に入る仲介業者は売主であり買主です。
そこに仲介手数料は発生する余地がありません。

なので売主から購入する金額と、買主に売却する金額に乖離があるのは当然です。

利益が一円もなければ誰が責任のある売主になるの?
って話です。

ついでに言うと、宅建業者が売主になってしまうとそれが第三者の為の契約であろうと、瑕疵担保責任を負ってしまいます。

話が少し難しい話になってきましたので、元の話に戻します。

不動産業者が売主になった時点で売買価格を決めるのも不動産業者になります。

1億円で仕入れた物件を1.5億円で売るのも2億円で売るのも自由です。

瑕疵担保責任を負わなければいけないから、売値は高くなるのは仕方ないですね。

その代わり基礎や雨漏りなど主要構造物に問題があった場合は、売主である宅建業者が責任を持って補修する。

だから安心だ。

こんな理屈なのか、どういった理屈なのかは知りませんが、担保評価よりはるかに多い融資金額を付けてくれる金融機関が登場しました。

また、法定耐用年数を過ぎている物件でも長期融資を付けてくれると言うではないですか。

これは不動産業者にとっては千載一遇のチャンスが登場したわけですね。

法定耐用年数といっても税務上のものであり、実際その年数が経過したから建物が使用できないというものではありません。

かといって、その決められた耐用年数を超えて融資してくれる金融機関は少なく、築年数の古い収益一棟もののマンションは出口を失っていたからです。

築年数が古い物件が新築物件、築浅物件と同じような家賃収入、表面利回りだと誰も購入しません。

なので必然的に、価格の割には家賃収入の高い物件がたくさんありました。

ただ長期融資が組めないため(10年返済、15年返済など。)毎月のキャッシュフローはほとんど残りません。

それが、25年、30年返済で貸してくれるという話が出てきたのです。

ぱっと見、毎月多額のキャッシュが手に残る絵が描けたわけですね。

ここに目をつけたのです。

でも普通に考えたらすぐに分かってしまう問題があります。

『今はいいけど、これから補修費がたくさんかかるな。』
『つぎ部屋が空いたら大規模改装が必要だな。』
『今で築30年、そこから30年返済って、支払い終わる頃には築何年?それまで建物もつの?』

そんな物件に2割+諸費用の自己資金を入れてまで購入しませんよね?

そこで
『自己資金で使うお金は将来の改装費用に置いておきましょう。』
『今回自己資金をできる限り使わず購入できるように働きかけてみましょう。』

都合のいいことに売主は自分です。

1億円で売ろうが1.5億円で売ろうが自由です。

『うちのお客様でうちの物件を購入したいお客様がいるんだけど、頭金3,000万円用意させるから残りのローン付けてあげてくれない?』

1.2億円の物件の2割は2,400万円、諸費用500〜600万円、合計3,000万円です。

1.2億円の物件に対して9,600万円の融資、これは金融機関にとって取りはぐれがないように思える数字です。

銀行にとっては悪くない話です。
不動産の相場まで銀行側が全て把握できるかと言えば当然できません。

だって業務はそれだけでないからです。
不動産のことは不動産屋、鑑定士に任せてこちらは審査するだけ。

そうなるのは当たり前の話です。

でも実際は9,000万円の物件取引だった。

つまり購入者は自己資金なしで不動産を購入したことになります。

不動産業者はこのような物件を8,000万円で手に入れればいい。
しかも登記費用、不動産取得税、改装費用も要らない。

そう考えたら8,500万円でも十分お釣りがくる仕事です。

購入する側は、同じ物件を8,500万円で購入できたかもしれません。
でも仲介手数料が280万円ほどかかります。
しかも物件価格の2割、1,700万円と仲介手数料以外の諸費用300万円ほど、2,000万円の自己資金を入れなくていい代わりに500万円高く購入する。

購入者も不動産業者も、そして融資をする金融機関もみんな納得の上のスキームだったように思います。

毎月の家賃収入が予定通り入ってくればという話ですが。

当然買う側もそのくらいは気付きます。

そこで出てくるのが
サブリース
です。


『大丈夫です。家賃の保証は当社がします。ただし◯年間ですが。』

購入者も最初の何年、場合によっては何ヶ月かはローンの支払額と家賃収入の差額を手にしていたはずです。

いつまでもこの素敵な話が続くかのような錯覚に陥っていたということです。

不動産業者にも感謝していたはずです。
もちろん金融機関にも。

今回の話は可愛そうな話ではありますが、儲け話に迂闊にも乗っかってしまった方にも落ち度はないとは言えません。

『預金通帳の改ざんを勝手にされた。』
『銀行とグルで嵌められた。』

たぶんこのような主張はみんなするでしょうね。

でも不動産業者が勝手に一人で行うことは不可能です。

もし銀行マンとお客様の会話で
『今回の自己資金はどちらの金融機関から動かしたのですか?』
『えっ。今回は現金少しも出してないよ。』
と言われればどうなります?

大変なことになりますよね?
不動産業者は私文書偽造で捕まり、お客様は物件を買うことができません。
決済は当然中止です。

なので普通に考えて、
不動産業者は買主に対して
『今回自己資金を◯◯万円入れたことになってます。口裏は合わせておいてくださいね。』

百歩譲ってこのくらいの話は行なっているはずです。

金融機関も預金通帳のコピー、手付金等の領収書のコピーで対応していたということは、ある程度は分かっていながら対応していた。

そういうことですよね?

シェアハウス投資に私が絡んでいるわけでもありませんし、三為もうちはやっていませんから真実は分かりませんよ。

でもそういう話ですよね?

実際に自己資金なしで購入しているお客さんの話を聞いているとこれが実態です。

サブリースの賃料が振り込まれない。
これはとてもきつい話です。

金融機関が支払いを待ってくれない。

これも現実です。

でも、サブリースがなくなれば自分で家賃収入を得る方法を画策すればいい。

どうやったら満室にできて、どうやったら収支をプラスに持っていけるのか、改めて考え直す機会になります。

私のお客様でもサブリース付きの物件を購入してもらっています。

でもそのサブリース賃料は私から見るととても安い賃料でした。

『サブリースをつけて契約してもいいですし、一定時期を超えたら外してもいいかもしれません。』
『逆に外した方が収益アップになるかもしれませんよ。』
こう思った物件をご紹介しています。

サブリースをうちがやっているわけではありませんし、そのサブリースがなければやっていけない物件を紹介していません。

どっちでもいいのです。

サブリースが入っていても安定して返済できる。
サブリースがなくなっても困らない。

こんな物件を選択していればどうにでもなりますよ。

逃げ道のない物件、出口のない物件を購入してしまうと真っ暗闇の中を手探りで歩いているのと同じです。

そんな物件を購入してはいけませんよ。

物件を選定するポイントは
①出口が見える物件
②今より収益性を上げれる物件
たったこれだけです。

この見通しが立たなければ物件など購入する必要はありません。

『こうしたらもっとよくなるのにな。』
『こういう客層狙ったら満室にできるかも。』

マンションオーナーになった瞬間からあなたは経営者です。

アウトソーシングはいいけど、他人任せはいけません。

たったそれだけのことなんですがねー。