収益用不動産を購入するときの判断基準ってどこに置いていますか?

一番目にしやすく、分かりやすいのが表面利回りです。

これはどこのサイトで見ても、どの物件を見ても書いてあるので一つの目安にはなります。

でもその物件のランニングコストがどのくらい掛かって、手元にどのくらいの金額が残るのかまで書いてあることはほとんどありません。

また、その物件に対してどのような金融機関がどのくらいの金利で貸してくれるのか、その辺について触れてることもありません。

なぜなら?

誰が運営するのかによって不動産の管理料は違ってきますし、購入する人がどういった人か(属性)によって調達金利は変わってきます。

実は一番大事なことはこの調達金利なのです。

同じ表面利回り10%といった物件があったとしても、築年数が古い物件と築年数の新しい物件では耐用年数が違いますし、遵法性のある物件(容積率、建蔽率OVERのない物件)とない物件では調達金利は大きく変わってきます。

なので、幅広いお客様に向けての情報発信では書きようのないところではあるのですが、そこはきっちりと把握しておかなければ収支計算が成り立ちません。

ここで登場するのがイールドギャップというものです。

本来は投資利回りと国債などの長期利回りとの差を示すものなのですが、不動産の用語では調達金利と利回りとの差のことを言います。

つまり、先ほどの表面利回り10%の物件で調達金利が4%ならイールドギャップは6%、調達金利が1%ならイールドギャップは9%ということになります。

ただこんな単純な話ではありません。

表面利回りというものは、満室時想定利回りであらわされます。

所有期間中、常に満室ということはありません。

どんなに人気のある部屋でも入退去は起こります。

入退去があれば次の賃借人が住みだすまでの期間の空室は生じます。

よく稼働率98%という管理会社さんを目にしますが本当にそうでしょうか?

全戸数10室というアパートで考えてみます。

稼働率97%


この表でいうと、全10室分1年間の空室状況を表にしてみました。

1年間のうち入退去があったのが、2部屋。前入居者が退室して次の入居者の家賃支払いが始まるまで103号室は2ヶ月間、104号室は1ヶ月間要したとしても建物全体で117ヶ月分稼働。これで稼働率97.5%です。

つまり1年のうちほとんどが満室状態ということになります。

こう考えると、稼働率は最高でも95%、強気の設定でも90%くらいでは見ておきたいところです。

表面利回り10%で1億円の物件があったとして、年間収入は満室時で1,000万円。

実質的には稼働率90%で900万円という設定ですね。

ここからさらに管理運営費を見ておかなければいけません。

毎月のランニングコストです。

RC(鉄筋コンクリート)造の物件と木造の物件ではまず年間の固定資産税が違ってきますし、さらにエレベーターの有無で毎月のランニングコストも変わってきます。

木造で自主管理となれば別ですが、一般的に考えると家賃収入に対して5%~10%程度のランニングコストは必要になってきます。

入退去があれば修繕費や不動産業者に支払う手数料も必要になりますので、そのあたりを含めると20%ほどのコストは見込んでいた方がいいかもしれません。

つまり、900万円×(1-20%)=720万円。

表面利回り10%だった物件が実質利回りでいうと7.2%まで下がってしまいました。

この実質利回りと調達金利の差で考えていかなければいけません。

これが本来の意味でのイールドギャップです。

不動産投資のセミナーでよく聞くこのイールドギャップですが、『2%あれば買い』とか言っている人がいます。

でも不動産って年々劣化していくのです。

家賃収入も年々減少します。

給湯器やエアコンなどの設備も経年劣化により交換が必要になってきます。

そのあたりの費用が一切かからないのであればいいかもしれません。

家賃が今後一切減少していかないのならいいかもしれません。

でも、そんなわけがないですよね。

家賃は下がるものです。

設備も劣化し交換が必要になるものです。

そうしたリスクを考えると2%のイールドギャップでは厳しくなります。

区分所有建物(分譲マンション)では、管理費と別に修繕積立金というものがありますよね。

一棟もののマンション、アパートでも本来であれば管理費(共益費)の分くらいは大規模修繕、設備の交換費用として余剰資金として区分しておきたいところです。

共益費部分で毎月のランニングコストをまかない、設備や修繕費などの将来発生するであろう出費をよけておく。

それらの費用を考慮してなおかつ、イールドギャップがどのくらい残るのかということを考えなくてはいけないのです。

でも本来考えなくてはいけないのは金利差だけではないのです。

借入年数も考慮に入れなければいけませんし、どの部屋がどのタイミングで設備交換が必要になるか?

また建物全体の大規模修繕がどのタイミングで必要になるのか?

そのあたりも考慮に入れる必要があります。

大規模修繕(外壁塗装やエントランスの工事、防水等)が2,3年前に終わっている築20年のマンションと、今後大規模修繕が必要になると思われる築20年のマンションを同じ利回りで考えることはできません。

また、地域によって賃貸需要の強弱によって募集期間も大きく異なります。

大阪市内なら1、2ヶ月で満室になる間取りでも、地方都市ならそうはいかないかもしれませんし、学生街にある部屋なら入学シーズンしか需要がない場合もあるかもしれません。

なので物件ごと、地域ごとによって考え方は異なってきます。

築30年のマンションで容積率OVER、物件価格1億円、表面利回り12%の物件があったとしましょう。

先ほどの例でみると、空室率90%で年間収入は1,080万円。

そこからランニングコストを引いて年間実質収入は864万円。

実質利回りは8.64%です。

調達金利が3.9%だとしたらイールドギャップは4.74%となります。

『これはOKだね。』

本当にそうでしょうか?

確かに収入は先ほどの計算でそうなるかもしれません。

調達金利3.9%で15年返済(1億円借入)なら毎月返済額は約73.5万円。

年間で882万円です。

さらにここから入替り時のリフォーム費用、仲介手数料、エアコンや給湯器、キッチン、浴室などの設備の交換費用、屋上防水や外壁塗装などが発生すればどうなりますか?

完全に破たんです。

20年返済で考えても毎月の返済額は約60万円ですから、年間の返済額は720万円。

ようやく収支は合ってきますが、余裕のある数字ではありません。

イールドギャップという言葉に騙されてはいけませんよ。

『レバレッジ』

『イールドギャップ』

これは、よく不動産セミナーで使われる言葉です。

私はほとんど使ったことがありませんが・・・

投資家さんを納得させるための用語です。

一番わかりやすい失敗しない不動産選びは、購入してからお金がかからない物件選びです。

経費の読みやすい物件選びです。

新築物件で収支が合う物件なら設備等の費用発生はしばらく生じませんし、大規模修繕が終わっているマンション、アパートなら多額な費用発生がしばらく生じることはありません。

ただこうした物件は当然誰の目にもつくような利回りでは出てきませんので、ご理解ください。

利回りだけじゃないんですよ。

また調達金利だけでもないんです。

もちろんこの2つの要素は重要ですが、そこだけでは判断できませんよね。

なので、とりあえず悩んだらご相談ください。

物件を購入する前にご相談ください。

どういった物件を購入したらいいのかというところからご相談ください。

少しはお役に立てると思いますよ。

ご相談は無料ですからお気軽に。

お問い合わせお待ちしております。