衣・食・住
人間が生きていくためには絶対必要なものだから、その仕事に関わっていたら食い扶持に困らないよ。
と不動産業界に入ったときに先輩に教えられました。
その当時ちょうどバブルがはじけた直後でしたが、その言葉通り今まで食い扶持に困ったことはありません。
でもこれからもそうなのでしょうか?
バブル期にはDCブランドブームなどがあり、私たちの若い時代には学生にもかかわらず2万も3万もするブランド服に身を包み、スーツ一着買うにも7万、8万のお金が必要でした。
それはアパレル業界も大盛況だったでしょうね。
高い洋服に身を包み、ホテルのレストランで食事し、不動産業界だけでなく、全ての業界で好景気でした。
それが今やUNIQLOやH&Mなど安くて高品質なブランドがたくさん出現し、コンセプトのない街中の洋服屋さんはほとんど潰れてしまいました。
また食の面でも安くて美味しい店がたくさん登場しました。
最近の居酒屋さんなど、どこに行っても美味しいですし、鳥貴族なんか全品280円でしかも美味しいときています。
近所の鳥貴族なんかいつ行ってもほぼ満席です。
UNIQLOと同じで、スケールメリットがあってこその低料金が出せるところもありますから、なかなか個人商店では太刀打ちできない世の中になっています。
価格勝負では大手に勝てません。
でも何故でしょう?
住友不動産販売や三井のリハウスが仲介手数料を負けてくれるわけではないですし、エイブルも賃貸仲介手数料を無料にしてくれません。
積水ハウスや大東建託が建築すれば一戸あたり1000万以上するアパートが中小工務店なら2割以上安く建ててくれます。
なので日本の不動産屋さん、工務店には中小零細の会社がたくさん残っているのです。
衣食住のうち、衣と食では力のないものは淘汰されてしまいました。
住の世界でもそういう未来がくることは容易に想像できてしまいます。
その中で生き残れるのは、価格勝負で生き残ってきた会社ではなく、きちんとしたコンセプトを持っている会社だけになるのではないでしょうか?
以前、このブログでも書きましたが賃貸仲介手数料の無料化などいつでも実現できます。
売買物件に関してもそういう流れは来るかもしれません。
でも、表面的には無料となっても手を替え品を替え何らかの対価は求められるものです。
実際に賃貸仲介の場合でも、礼金、敷金は無料の物件は多くなりました。
でもその代わりに、賃貸保証会社の費用や鍵交換代、ハウスクリーニングの費用など明目を変え請求されていたりします。
売買物件でもそうです。
いまだにローン手数料という名目で仲介手数料以外にも報酬を請求したりということは一般化しています。
今やネット主流の時代ですから、住宅ローンの申請手続きは個人でもネットからすることは可能です。
でもこの仕事こそ本来は手数料を払う値打ちのある仕事だと思うのです。
今は住宅ローンの金利はどこもそう変わらないですが、三疾病や八疾病、失業給付金など住宅ローンの商品は多様化しています。
また金利が0.1%変われば3000万の借入なら年間で3万円変わります。
先ほどの団信付き住宅ローンの話でも、内容によっては現在加入している生命保険を解約しても代用できそうな内容の商品もあったりします。
そう考えると住宅ローン商品によっては、毎月1.5万〜2万円ほどの家計を節約できるかもしれません。
また売買物件購入の際にも、仲介手数料を余分に払ってでも購入したい物件があったりします。
私自身も以前購入した物件で、聞いた金額があまりに安かったので仲介手数料を6%でも10%でも払うからとお願いして譲ってもらったことがありました。
仲介手数料という対価は本来こちらサイドから決めるものではなく、お客様サイドから決めてもらうもののような気はします。
もちろんその金額が納得いかないものならば売らないという選択肢を持てるという前提ですが。
優秀なブローカーは報酬の枠に収まらない仕事をします。
逆に大した仕事もしていないのに報酬だけは決められた額ということもあります。
中小企業が生き残っていくとすればこのプロフェッショナルな仕事をしていくことが求められます。
情報量で他を圧倒する。
企画力で他にないものを創り上げる。
ファイナンスに絶対的な強さを持っている。
お客様に合った最善の方法を提案ができる提案力を持っている。
何か一つ飛び抜けたものが必要になってくるでしょう。
だって、それ以外必要とされる要素がありませんもの。
価格だけで勝負していると、それ以上の価格を提案されてしまうと負けてしまいます。
より薄利で攻勢をかけられると勝てなくなります。
もちろん先ほど列記した内容も同様かもしれません。
でも価格競争って誰にでもできる手法なんですよね。
昨日不動産屋さんを開業した人も、異業種から参入してきた人にも。
やはり他の人にマネができないものを確立していく必要はありますよね。
淘汰される業種、職種というものは当然存在します。
逆にどんな世の中になっても廃れない商売も存在します。
不動産業という商売がどちらに当てはまってしまうのか?
個人的にはいつ淘汰されても仕方ない業種だと思っています。
あるデータでは賃貸住宅を借りる際に店舗に出向かずに契約する率が3割を超えているそうです。
もちろん物件前で待ち合わせして内覧し、その後契約では店舗に訪れているのでしょうが。
重要事項説明のIT化はこれからもっともっと進んでいくでしょう。
そうなれば楽天やAmazonのように実店舗がなくても成立してしまうかもしれません。
Airbnbに代表されるような民泊ではセルフチェックインのシステムが確立しています。
オートロック、部屋の鍵も遠隔操作で開錠する技術は出来上がっています。
またカラオケボックスのように室内にカメラを設置しておくことにより、お客様自身がセルフで内覧することのリスクを回避することさえ可能です。
これだけのシステムがあれば不動産仲介業者は必要ありません。
オーナーさんはどんどんこうしたシステムを活用すべきです。
今まで不動産業者に支払っていた手数料が大幅に軽減できます。
オーナー自身がお客様と契約するのに重要事項説明書は必要ありませんし、家賃保証会社とも直接契約することも不可能ではありません。
売買物件の場合はどうしても融資がつきものなので、買主が全て自分で行うことは少々ハードルが高いような気はします。
アメリカの不動産では物件を自分でチョイスした後にエージェントを選択したり、住宅ローンのオフィサーを選んだりという流れになっています。
融資の専門家、物件調査の専門家、不動産仲介の専門家、それぞれに分業しているわけです。
でも日本では逆にワンストップで全てできますと謳います。
これは、DIYの文化が根付いていないからなのです。
よくアメリカのテレビドラマで自宅の壁をコロコロとローラーで塗装しているシーンが出てきますが、日本でこういうことをしている人ってなかなかいないですよね。
内装工事ってクロス(壁紙)屋さん、床(フローリング)屋さん、大工さん、塗装屋さん、サッシ屋さん、キッチン、浴室などの設備屋さんなどに分業しているのですが、ワンストップでやっているところってそのいずれにも該当しない内装工事屋さん、仕切り屋さんの場合が多いのです。
もちろんその中でも得意分野、不得意分野がありますので料金は高かったり安かったりマチマチです。
これを全て自分で個別発注すれば2割、3割は安くなります。
壁紙くらいならじぶんで簡単に貼りかえれますよ。うちはたまに模様替えしています。一度試してみてはいかがですか?意外と簡単ですよ。ただ日程調整や段取り調整が大変なのでみなさんワンストップの会社に発注してしまうのです。
建築屋さんも同じ仕組みです。
工務店に発注しても自分で全て行うわけでなく、設備屋さん、電気屋さん、クロス屋さんなどに分業されています。
それを仕切っているのが工務店ということなのですよね。
全て自分で行うのはなかなか難しいですが、不可能ではありません。
なので安く仕上げようとすると方法はいくらでも見つかります。
2人、3人でやっている工務店でも新築の家を建てることができるのはこうした理由からです。
建築屋さん=現場監督さん。
内装工事屋さん=現場監督さん。
現場監督を自分でやると2割程度のコストダウンです。
ただ一見の職人さんが工務店や内装工事屋さんの発注する価格と同じ価格で施工してくれることはないでしょうから、多少は高くはなるでしょうが、継続して発注していくような大家さんになるのなら、そうした個別の職人さんは手配しておくできべす。
一回あたり1割の内装工事費が変わるだけで5年、10年経てば大きく差が出ますよね。
仕組みが分かれば同じことができてしまうもので継続した収益を作り上げることって容易くはありません。
不動産屋さんでも同じです。
賃貸系の不動産会社、売買仲介の不動産会社を立ち上げるのにそんなに苦労は要りません。
売買物件はレインズでほとんどの物件を入手できますし、賃貸物件は空室があればほとんどの物件の部屋付は可能です。
一般のお客さんがレインズを見れないから成り立っている商売なのです。
でもこれって消費者保護の観点から見るとどうなのでしょう?
ポータルサイトで自分で物件を見つけて、不動産会社に連絡して仲介手数料を支払います。
不動産業者の仕事って何なのでしょう?
買主さんのためにいい物件を探すことだったはずなのに、今はその物件探しの手間をお客様自身が、ポータルサイトが補ってくれています。
レインズに載っている物件は部屋付してくださいね。
売ってくださいねと掲載している物件です。
その部屋付や売却をするのがポータルサイトに代わってしまえばどうなのでしょう?
根付の業者さんからすればどちらでもいいわけですよね。
ということは、買い側の仲介専門業者の存在意義って物件を探すことではなくなります。
購入するときその物件のリスクを見極め的確なアドバイスができる立場、賃貸物件を選ぶ際の的確なアドバイスができる立場になれていないと相談にすら来てもらうことがなくなります。
なのでポータルサイトに一般物件を掲載し集客しているだけの会社は淘汰されてしまうことになります。
消費者にとって必要のない商売はあっても仕方ないですものね。
商売をする以上、お客様に必要とされることが大切です。
なくては困る、いなくては困るという存在でなくてはいけません。
不動産は水商売とよく言われます。
契約が水に流れるから水曜日は休みと風習が今でも残っています。
水商売で思い付くのが、クラブやラウンジのような飲み屋さんです。
酒屋さんで買えば2000円ほどで買えるお酒を1万、2万出して飲みに行きます。
でもこれが水商売なのですよね。
自宅で飲む2000円のお酒を誰かと楽しく飲むことによって、1万円でも2万円でも高く感じません。
不動産業も例え自分でできることでも、お金を払ってでもしてもらう価値がないと誰も頼まなくなります。
先ほどのローンの件や自分で入手できないような物件を提供してくれるとかですよね。
不動産業者のみなさま、のほほーんとしていると未来を失ってしまうかもしれませんよ。
もうその未来は目の前に迫ってきています。
未来を明るいものにするのも、目の前の視界をなくしてしまうのも自分次第です。
私はまだまだ子どもが小さいので未来を明るいものにしていかなければいけません。
なので、まだまだ切り拓きますよ。
ついでにみなさまの未来を切り拓くお手伝いをします。
そんなお話は次回のセミナーでしていきたいと思います。
詳細はまたこのブログで公表します。
近日中には。
来月5日開催予定です。
その時にお会いできればと思いますので、そちらもお楽しみに。